2022年3月4日金曜日

子はかすがい。大人の背中を見て育つ子ども。

 


 少し専門的ではありますが、学習という学問についてお話ししましょう。なにか物事を学ぶということは、様々な要素があります。技術を学ぶ、生き方を学ぶ、話し方を学ぶ、考え方を学ぶ。「学ぶ」というのは多種多様的に使われる言葉の一つです。


 その学ぶ方法で最も古典的なものは「観察学習(モデリング)」があります。

 鳥類でも、哺乳類でも行っている学習で、親が獲物を取ることを「見て」、「学ぶ」わけですね。


言葉が必要なわけではなく、視覚情報としてあれば、それが学習につながるということで、子どもにどんな物を「見せるのか」というのは、じつはとても大きな問題なのです。


 しかし、今の社会では情報が溢れています。シャットアウトするには、なかなか難しくさらに、変化に親さえもついていけないことも多々あります。知らぬ間に子どもたちが、我々の知らない情報に触れていることもあります。情報を統制することは本当に難しいのです。


 「テレビを見せない」
 「漫画を見せない」
 「スマホは与えない」

 このような禁止で、情報統制をしようとしても、その抜け道は必ずあり、禁止されるがゆえに逆に興味が出てしまうのも人としての重要な行動の一つです。


 だめな理由をちゃんと説明されず、一方的にシャットアウトとされてしまうことで、納得できない人間は、その理由を模索しようと、あえて禁止されていることに首を突っ込んでしまいます。やってはいけないという指示は、あまり効果がないと言えます。


 


 「情報を制約する」ということは非常に困難なのです。



 では、どうすればいいのかというと、少しでも彼ら・彼女らに対して良質な情報に触れる機会を親が作ることにあります。さまざまな情報が入ってくることは致し方ないとしても、そのなかで良質な情報をあえて提供することはできます。


 「漫然とテレビを見るのではなく、NHKのドキュメントを一緒に見る時間を作る」
 「漫画を見せないのではなく、歴史物を忠実に再現している漫画を一緒に読む」
 「スマホを与えないのではなく、一緒に学習用アプリを使って楽しむ」

 という、情報を調整することが重要と言えます。



 これは生活においても同じことが言えます。掃除が苦手なご家庭の場合、お子さんも概ね苦手になります。好き嫌いがある親御さんを見ていると子どもも好き嫌いが多くなります。日常からみているものが、彼らの見本となり手本となっていくのです。


 


 しかし、親のただの人です。



 聖人君主にはなりません。子どもと接している時間がながければ長いほど、全てが正しく清廉潔白とはいれません。こえは致し方ないことです。子どもも十分それは理解しています。ただその情報だけを与えるのではなく、世の中には様々な通念があることも学んでもらうことは重要です。




 特に礼儀作法などは、まさに子どもは親の生き写しになります。



 こういったことを、伝え続けることは本当に大変なことです。だからこそそれを専門にしている人たちに力を借りるわけです。


 礼儀作法などが自分で教える力がないし、再現し続ける力がないと思えば、礼儀作法を教える教室に通って、見本をみてもらう機会を与えるのです。


 学習習慣を身に着けたいと思っておられるのであれば、保護者が自ら学習している姿を見せる必要がありますが、それはなかなか難しい。そこで塾などの専門の環境を提供することで身につくのです。




 観察学習はとても時間がかかります。さらに反復が必要です。



 一度学んだからと言っても、すぐに再現し続けることができるというものでもありません。学習習慣も礼儀作法もすべて何度も、何回も、何時間も、何日も、何年も、続けることで手に入れられるものなのです。




 さらに子どもは大人と大人をつなぐ「かすがい」になります。

 かすがいをご存じない方にご説明をいれると、木材と木材をつなぎ合わせるのに、組木とさらに補強する上でも、この字型の釘で接続します。これを鎹といいます。木材同士がより強固になるという意味で、「子はかすがい」と呼ばれます。さらにこのかすがいは、両方の木材に影響を受けます。また逆にかすがい(子ども)がぶれれば、木材(保護者)の接続が不安定になります。


 このお互いに影響しうる関係性を、共依存とも呼ばれます。早くから、独立した個人として関係性を構築することもあるでしょう。逆に成人後も依存性を構築する場合もあるでしょう。どのような立場であったとしても、距離だけではなく、その与えられた影響によりお互いが変化していくのです。




 模範となる大人の背中を見せることは、子どもが真似しやすい目標となるのです。

 今の時代、すべての保護者が対応することはとても難しい時代に来ました。ある意味役割を分担して、良い関わりがもてる大人と協力し合う関係性を構築することが求められているのでしょう。


 

 

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